熊本県熊本市楠、龍田、武蔵ヶ丘、合志市を主な診療圏とする眼科医です。視能訓練士3名常駐。緑内障、加齢黄斑変性症、斜視、弱視、ロービジョンケア等。

原眼科
南阿蘇原眼科

Best Poster Award受賞

Best Poster Award受賞
原 竜平

2010年4月18日から21日かけてイタリアのローマで行なわれた「第12回 国際アミロイドーシス学会:k! International Symposium on Amyloidosis」に発表して来ました。
題名は「トランスサイレチン関連眼アミロイドーシスの新たな治療:Novel Therapy for Transthyretin related Ocular Amyloidosis」です。

アミロイドーシスという病気は、様々な原因で正常なタンパク質がおかしくなり、「アミロイド」という物質になり体のいろんな所にたまる病気です。アルツハイマー病やプリオン病(狂牛病)などもアミロイドーシスの一型です。

そのアミロイドーシスの一つとして、「家族性アミロイドーシス:FAP」という病気があります。これは全身の様々な臓器にアミロイドが溜まり発症から10年前後で死亡する病気です。FAPには遺伝性があり、更に地域性があります。世界的にはスウェーデン・ポルトガル・日本に多く、日本では熊本と長野に集中しています。

現在、私は熊本大学附属病院の外来で、通常の網膜専門外来と併せてFAP患者の診察を担当しています。

FAPでは眼にもアミロイドが溜り、硝子体混濁(眼の中にアミロイドが溜っていく状態)や緑内障(見える範囲が欠ける状態)となり最終的には失明してしまいます。FAPの全身状態の進行は肝臓移植により劇的に改善される事がわかり、近年積極的に治療できる様になりました。肝臓がアミロイドを作っている事が明らかになったからです。確かに以前に比べて眼科外来まで自分の足で歩いて来れる人が増えたと実感しています。
しかし、残念な事に眼のアミロイド合併症は肝臓移植では阻止できず、肝臓移植の有無に関係なく進行していきます。肝臓とは別に眼の中の網膜でも独自にアミ ロイドを作り出しているからです。今までは硝子体混濁や緑内障に対して、点眼や手術で対応してきましたが、出てしまった病気に対しての「対処療法」でしか なく、根本的に治す「根治療法」ではありません。
せっかく寿命が延びたのに、見えないために家の中から出られない、生活していく上で支障をきたすという、なんのための長生きなんだ、という訴えを何度も言われました。
前任の川路隆博医師と、どうにか出来ないものか散々考えました。全身はアミロイドを作っている肝臓を取り替えれば解決するだろうけど、眼はアミロイドを作っている網膜を取り替える事できないのです。
しかしある日、気付きました。「取り替えられなくても、減らす事は出来る」と。通常の眼科治療として我々が日常的に行なっている網膜光凝固(レーザー治 療)で網膜は減らせるのです。そこで、患者さんに可能性や起こりうる副作用などを話して同意を得ました。何もしないで進行するより、何かして進行した方が 良いと言った言葉が耳に残っています。
片眼には光凝固を行い、もう片方は何もせずに3年間経過を診ました。その結果やはり予想していた様に、光凝固を行なった眼では明らかに進行が抑制されていました。今までは「対処療法」しか出来なかったFAPの眼の合併症に対して、初めて「積極的治療」を行なう方法を確立できたのです。

今回は、この内容を国際アミロイドーシス学会で発表しました。基本的には内科医や移植外科医が多い学会で、FAPだけではなくアミロイドーシス全般の学会なので、果たしてどこまでこの内容が伝わるのか不安でしたが、晴れて最優秀賞に当たるBest Poster Awardを受賞する事が出来ました。しかし、一番嬉しいのは眼科ではない医師が内容を見て この治療法は妥当だと判断してくれた事です。自分たちがやっている事の力強い裏付けになった事です。
熊本には多くのFAP患 者がいます。遺伝性/地域性のある病気ですので患者同士のつながりも強く、しっかりした患者会を作ってこの病気について非常に深く勉強しています。以前、 この患者会に呼ばれてこの内容を説明しました。現在では多数の人が熊本大学付属病院の外来に光凝固を受けに来てくれています。

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